肝臓ミトコンドリア障害マーカーOCT

はじめに

Ornithine Carbamyltransferase(OCT)は尿素回路で作用する酵素で、哺乳類では肝臓ミトコンドリアに局在します。高感度にOCTを定量できる80127 ラット/マウスOCTアッセイキットは、培養細胞やモデル動物での肝障害の検出に活用できます。
本ページはOCTについて、いくつかデータを紹介しております。無断転用、印刷配布はしないでください。内容へのご質問等はヤマサ醤油営業情報室へお問い合わせ下さい。なお、一部データは製品リーフレットにも記載しておりますので、ダウンロードしてご利用ください。

培養細胞での薬剤性肝障害検出

ラット肝臓初代培養細胞の培養液中に、Amiodarone、Amlodipine、Celecoxib、Imipramine、 Tamoxifen、Troglitazone、Fluoxetineなどの肝毒性薬剤を添加し、培養液中OCTを測定したところ、細胞質由来のAlanine aminotransferase(ALT)に比べ、より低い添加量で上昇することが報告されています1)。培養細胞を使った薬剤の肝毒性の指標として、OCTは有用です。

モデル動物での肝障害検出

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)およびアルコール性肝障害(ALD)モデルラットで血清OCTは高値を示しますと報告されています2)。モデル動物における肝障害の指標として、OCTは有用です。

NASHモデルラットでの検討結果

SDラットにコリン欠乏食(CD)を摂取させ、血清中の肝障害マーカーをコントロール食摂取ラットと比較しました(図1)。SDラットはCD食による肝障害が起こりにくいとされていますが、摂取4週目にCD食摂取ラットのOCTはコントロール食摂取ラットに対して有意に高値を示しました(p<0.05)。また、CD食摂取4週間目の肝臓を病理検査したところ、軽度の線維化が認められました。(図2)。OCTが非アルコール性脂肪肝炎モデルラットにおけるマーカーとして有用であることが示されました。

図1 NASHモデルラットにおける血清中の肝障害マーカー値
OCT, ornithine carbamyltransferase; GLDH, glutamate dehydrogenase;ALT, alanine aminotransferase;
AST, aspartate aminotransferase; GU, guanase;
GGT, gamma glutamyltranspeptidase;
ICD, isocitrate dehydrogenase; SDH, sorbitol dehydrogenase; LDH, lactate dehydrogenase.

図2 CD食摂取4週間後の病理検査結果

(データは第36回日本トキシコロジー学会より(一部改変))

ALDモデルラットでの検討結果

Wistarラットにエタノール(飲水中に5%から段階的に30%まで増加)及び/又は高脂肪食(HFD)を15週間摂取させ、血清中の肝障害マーカーを測定しました。エタノール摂取群およびHFD+エタノール取群において、血清OCTはコントロール群と比較して有意に上昇しました(図3)。エタノール摂取ラット肝臓の病理学検査の結果、小葉中心性に肝細胞好酸性化及び肝細胞空胞化が観察され、中心静脈周囲では肝細胞変性及び単核細胞浸潤が認められました(図4)。OCTがアルコール性肝障害モデルラットにおけるマーカーとして有用であることが示されました。

図3 ALDモデルラットにおける血清中の肝障害マーカーの変動
OCT, ornithine carbamyltransferase; GLDH, glutamate dehydrogenase; ALT, alanine aminotransferase;
AST, aspartate aminotransferase; LDH, lactate dehydrogenase; GU, guanase; ADH, alcohol dehydrogenase;
ICD, isocitrate dehydrogenase; SDH, sorbitol dehydrogenase; GGT, gamma glutamyltranspeptidase; ARG, arginase.

図4 エタノール摂取ラットの病理検査結果

参考文献

1.Furihata T et al. (2016). Drug Metab Pharmacokinet. 31. 102-105.

2.村山 寛 他: 第36回 日本トキシコロジー学会