TSH受容体抗体の歴史
~ヤマサとの関わり~
独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
日本甲状腺学会 前理事長
田上 哲也 先生監修
TSH受容体抗体の歴史は1956年にさかのぼります。
ニュージーランドのAdams博士とそのグループがモルモットの甲状腺を刺激する物質を発見したことから始まります。
1974年には、イギリスのSmith博士らが、この物質が自己抗体であることを明らかにしました。現在、この自己抗体はTSH受容体抗体(TSH Receptor Antibody)と称され、英語の頭文字を取り、TRAbと呼ばれることもあります。
このTSH受容体抗体の抗体量を調べる TRAb検査キットは1982年に製品化され、日本では1985年より臨床使用されています。後に、TRAb検査キットは第二世代と呼ばれる検査法に改良され、この第二世代TRAb検査キットをヤマサが輸入販売していました。今日では、第三世代と呼ばれる検査法が使用されています。
また、国内では女屋博士らが、海外ではOrgiazzi博士らが、同時期にヒトの甲状腺の材料を用いて、甲状腺を刺激する因子を発見しました。その因子もTSH受容体抗体であり、現在のTSAbに相当します。その後、甲状腺疾患研究の第一人者である笠木博士とそのグループがヒト甲状腺細胞を用いて、甲状腺を刺激するTSAbの測定系を開発しました。
そして1996年、ヤマサは日本で初めてTSAb検査キットを製品化しました。TRAb検査が抗体の量を測定する一方、TSAb検査は抗体の活性を測定しています。
以後改良を重ね、2022年にはバイオセンサ技術を用い、高感度な性能と操作の簡便化を実現したバイオセンサTSAb「ヤマサ」 を製品化し、医療に貢献しています。
- TSH受容体抗体の変遷
- 検査キットの変遷~ヤマサの関わり~
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1956
Adams博士らが長時間甲状腺を刺激する物質を発見し、LATSと命名
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1967
Adams博士らがバセドウ病に高頻度に検出されるLATSプロテクターを発見
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1973
紫芝博士らがLATSプロテクターが甲状腺を刺激する作用を持つことを発見
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1974
Smith博士らがLATSは標識TSHの甲状腺膜への結合を阻害し、甲状腺を刺激する自己抗体であると提唱(現在のTRAbに相当する)
-
1976
Orgiazzi博士らがヒト甲状腺細胞膜を用いてcAMPを測定し、HTACSと命名
女屋博士らがバセドウ病患者血清がヒト甲状腺細胞のコロイド小滴を増加させ、cAMPも増加することを報告し、HTSと命名(現在のTSAbに相当する)
-
1978
遠藤博士らが標識TSHの甲状腺膜への結合を阻害する抗体は必ずしも刺激だけではなく、抑制する自己抗体の存在を明らかにした(現在のTBAbに相当する)
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1982
笠木博士らがヒト甲状腺培養細胞を用いた甲状腺刺激活性測定法を開発(現在のTSAb測定法の原型)
Smith博士らが可溶化ブタ甲状腺膜を用いた液相によるTSH結合阻害抗体を測定するキットを開発し、TRAbキットとして発売
-
1985
日本にSmith博士らのTRAbキットが導入され発売
-
1986
笠木博士らがブタ甲状腺細胞を用いたTSAb測定法を開発
(検体としてPEG抽出IgG分画を用いた) -
1987
笠木博士らがラット甲状腺培養細胞を用いたTSAb測定法を開発
-
1996
TSAbキット「ヤマサ」を発売
ブタ甲状腺細胞とPEG抽出IgG分画を用いた検体を使用し、日本で初めてTSAbを測定するキットを開発 -
1998
TSBAb測定法を開発
笠木博士とヤマサがTSAbキット「ヤマサ」を応用し、TBAbの活性を評価するTSBAb測定法を開発 -
1999
Costagliola博士らが固相化したリコンビナントヒトTSHレセプターとの結合阻害を測定するキットを開発し、第二世代TRAbキットとして発売
Sanders博士らが固相化した遊離ブタ甲状腺細胞との結合阻害を測定するキットを開発し、第二世代TRAbキットとして発売
-
2000
TSAbキット「ヤマサ」を改良
越智博士らがTSAb測定に用いるPEG濃度を18%から30%に高めることで高感度化を実現 -
2001
DYNOtest TRAb human キット「ヤマサ」を発売
Costagliola博士らの第二世代TRAbキットを日本に導入 -
2004
Smith博士らがバセドウ病患者リンパ球からヒト刺激型TSHレセプターモノクローナル抗体(M22)を単離
-
2008
M22 ヒトTSHレセプターモノクローナル抗体を使用した全自動測定試薬が、第三世代TRAbキットとして発売
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2010
Evans博士と田上博士らがバセドウ病経過中原発性甲状腺機能低下症に転じた患者血清から刺激型(K1-18)と阻害型(K1-70)のモノクローナル抗体を単離
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2014
TSAbキット「ヤマサ」EIAを発売
測定時間の短縮・NonRI化を目的にcAMPのEIA法を開発
検体の前処理もPEGから活性炭処理に変更し操作性を簡便化TSBAb EIA YAMASAを発売
EIA法により、TBAbの活性を評価するTSBAbキットを開発 -
2016
Krieger CC博士らが甲状腺眼症の成因として、TSHレセプターとインスリン用成長因子(IGF)‐1との相互作用を提唱
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2022
バイオセンサTSAb 「ヤマサ」を発売
ヒトTSH受容体、cAMPバイオセンサーを発現した細胞によるバイオアッセイ法を開発し、高感度な性能、操作の簡便化を実現BIOSENSOR TSBAb YAMASAを発売
バイオアッセイ法により、TBAbの活性を評価するTSBAbキットを開発
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1956
Adams博士らが長時間甲状腺を刺激する物質を発見し、LATSと命名
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1967
Adams博士らがバセドウ病に高頻度に検出されるLATSプロテクターを発見
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1973
紫芝博士らがLATSプロテクターが甲状腺を刺激する作用を持つことを発見
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1974
Smith博士らがLATSは標識TSHの甲状腺膜への結合を阻害し、甲状腺を刺激する自己抗体であると提唱(現在のTRAbに相当する)
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1976
Orgiazzi博士らがヒト甲状腺細胞膜を用いてcAMPを測定し、HTACSと命名
女屋博士らがバセドウ病患者血清がヒト甲状腺細胞のコロイド小滴を増加させ、cAMPも増加することを報告し、HTSと命名(現在のTSAbに相当する)
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1978
遠藤博士らが標識TSHの甲状腺膜への結合を阻害する抗体は必ずしも刺激だけではなく、抑制する自己抗体の存在を明らかにした(現在のTBAbに相当する)
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1982
笠木博士らがヒト甲状腺培養細胞を用いた甲状腺刺激活性測定法を開発(現在のTSAb測定法の原型)
Smith博士らが可溶化ブタ甲状腺膜を用いた液相によるTSH結合阻害抗体を測定するキットを開発し、TRAbキットとして発売
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1985
日本にSmith博士らのTRAbキットが導入され発売
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1986
笠木博士らがブタ甲状腺細胞を用いたTSAb測定法を開発
(検体としてPEG抽出IgG分画を用いた) -
1987
笠木博士らがラット甲状腺培養細胞を用いたTSAb測定法を開発
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1996
TSAbキット「ヤマサ」を発売
ブタ甲状腺細胞とPEG抽出IgG分画を用いた検体を使用し、日本で初めてTSAbを測定するキットを開発 -
1998
TSBAb測定法を開発
笠木博士とヤマサがTSAbキット「ヤマサ」を応用し、TBAbの活性を評価するTSBAb測定法を開発 -
1999
Costagliola博士らが固相化したリコンビナントヒトTSHレセプターとの結合阻害を測定するキットを開発し、第二世代TRAbキットとして発売
Sanders博士らが固相化した遊離ブタ甲状腺細胞との結合阻害を測定するキットを開発し、第二世代TRAbキットとして発売
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2000
TSAbキット「ヤマサ」を改良
越智博士らがTSAb測定に用いるPEG濃度を18%から30%に高めることで高感度化を実現 -
2001
DYNOtest TRAb human キット「ヤマサ」を発売
Costagliola博士らの第二世代TRAbキットを日本に導入 -
2004
Smith博士らがバセドウ病患者リンパ球からヒト刺激型TSHレセプターモノクローナル抗体(M22)を単離
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2008
M22 ヒトTSHレセプターモノクローナル抗体を使用した全自動測定試薬が、第三世代TRAbキットとして発売
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2010
Evans博士と田上博士らがバセドウ病経過中原発性甲状腺機能低下症に転じた患者血清から刺激型(K1-18)と阻害型(K1-70)のモノクローナル抗体を単離
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2014
TSAbキット「ヤマサ」EIAを発売
測定時間の短縮・NonRI化を目的にcAMPのEIA法を開発
検体の前処理もPEGから活性炭処理に変更し操作性を簡便化TSBAb EIA YAMASAを発売
EIA法により、TBAbの活性を評価するTSBAbキットを開発 -
2016
Krieger CC博士らが甲状腺眼症の成因として、TSHレセプターとインスリン用成長因子(IGF)‐1との相互作用を提唱
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2022
バイオセンサTSAb 「ヤマサ」を発売
ヒトTSH受容体、cAMPバイオセンサーを発現した細胞によるバイオアッセイ法を開発し、高感度な性能、操作の簡便化を実現BIOSENSOR TSBAb YAMASAを発売
バイオアッセイ法により、TBAbの活性を評価するTSBAbキットを開発
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